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データ解析方法
システムの運動を観測して抽出したデータから時系列データを作成します。例えば、工業的システムが発信する情報には、流量、圧力、温度、振動、変位運動、回転運動等の様々な物理的な情報があります。システムの運動を記述するためにそれら情報から得られる信号をサンプリングしてその順序に並べたデータ列を、時系列データ、もしくは単に時系列と呼びます。 時系列を作成する具体例として、一見簡単そうに見受けられる回転機械の回転を支える転がり軸受けの時系列を考えて見ます。転がり軸受けは、損傷のない理想状態にあっても、転がりによって軸受けのハウジングに微小振動を発生し、その振動を回転機械に伝達します。 従って、転がり軸受けの疲労や損傷状況を診断するために、振動加速度計を回転機械の転がり軸受けに近い箇所に設置して、計測した振動データを並べた時系列を作成できます。さらに、軸受けの損傷が、熱や音を発生するのでその温度や音を計測し、それら計測値を並べた時系列も作成できます。 しかし、工業システム以外の広い範囲にも応用できる時系列の作成方法もあります。 回転機械の回転運動の情報を、1回転したと言う合図とします。この時、その 合図をパルス信号に変換します。そのパルスと次のパルスの 間隔時間(周期)を計測し、その周期をパルスの検出順に並べたとします。すると、その周期のデータ列が、回転機械システムの回転運動を記述する時系列となります。 この様な、パルス(何かの合図)とパルス(何かの合図)の間隔に比例する量を、時系列とするシステムは、私たちを取り囲む21世紀の複雑な環境に数多く見出すことができます。 地震のシステムや人体の循環器システムもその例です。地震の場合は、発生した地震と地震との間隔時間となり、循環器の場合は、心臓の鼓動と鼓動との間隔時間です。また、合図となる信号は、システムの状態や運動が、DNAの様に記号で 配列された情報として記述される場合にも、取り出すことが可能です。 時系列には二種類のノイズが混入するのでシステムの運動を時系列から抽出することが困難になる事が多くなります。しかし、時系列には、通常、二種類のノイズが混入しています。
従って、混入するノイズの量や大きさが増加すると、システムに異常が生じ始めても、時系列に出現すべき異常の始まりは、混入した先の二種類のノイズ とまったく区別が付きません。ノイズの大きさが小さい理想状態でも、通常、異常の始まりは小さいので、そのノイズとシステムの異常の始まりとの区別ができなくなります。 例えば、回転機械が、一分間にほぼ3000回転している正常な回転運動をしているとします。そして、1回転に要する時間 (20ミリ秒)の0.01%から0.1%(2マイクロ秒から20マイクロ秒に相当する)の時間の間だけ外から力が加わり、回転を制止するような異常を起こし始めたとします。それは、正常な信号に微少な500KHzから50KHz程の高周波が重なっている状態で す。通常その様な異常信号は、その周波領域のより大きな振幅値を持ったノイズに隠されていて、その異常を検出することは不可能とされています。しかし、現状は、その様な微少異常が、回転機械に非線形挙動つまりChaos(カオス)挙動を引き起こし、機械を破損しているようです。 ノイズだらけの時系列からシステムの非線形運動を抽出する汎用信号解析方法は、フーリエ解析やウエーブレット解析等の線形解析ツールでなく、カオス解析の汎用非線形解析ツールです。しかし、その非線形システムに生じる異常運動は、異常がどんなに微少であっても、システムの運動の変位、速度、加速度間の関係が、ノイズとは異質な関係として出現するはずです。 従って、 システムが安定領域から不安定領域へと移行する時、それら3個のパラメータが持つ異質な関係を正確に抽出することが、異常予知診断の鍵となります。 しかし、非線形システムが安定領域から不安定領域へ移行する際、システムの時系列に出現する予兆や変化を抽出(異常予知診断)するには、線形解析手段であるフーリエ解析等は有益ではありません。また、事象が時間的に局所化された場合有効であるウエーブレット解析も異常の発生時刻は特定できる場合もありますが、予知診断を含めた非線形解析には有効とは言えないと思えます。 唯一有効な手段は、カオス解析の基本的なツールを用いて、システムの運動を観測して得た時系列を、位相空間(状態空間)で解析することです。 例えば、 3次元の状態空間で解析する場合を取り上げますと、それは、観測時にある程度ノイズを除去したN個の時系列のm番目のデータ、X(m)、から次のステップで解析することです。
そして、この軌跡が、元の非線形システムのダイナミックスを再表現(再構築)するので、この軌跡を解析します。 シフトする時間(時間遅れ)と、抽出するデータ数(独立な次元数)とを最適に選ぶと、そのベクトルの軌跡の集合(奇妙なアトラクターと呼ばれる)が、その非線形システムを特徴づけます。そして、そのようなアトラクターを描くようなモデル式を構築できると、そのモデル式に基づきシステムの挙動予測や診断を実施することが可能となります。 参考文献Abarbanel, H. D. I., Brown. R,, Sidorowich, J. J., Tsimring, L. S., "The Analysis of Observed Chaotic Data in Physical Systems", Reviews of Modern Physics,Vol.65, No.4, 1331-1392, (1993). カオス解析の汎用ツールは異常予知診断に最適とは言えないので、TEC21の非線形解析方法を使用します。しかし、汎用非線形解析で使用する先のx-y-z空間の3つの座標軸には、物理的な意味が付随しません。その座標軸の選択は、観測した時系列データから元のシステムの運動を状態空間に再構築し、その軌跡を描くモデル式を探すためのものです。従って、ベクトルが描く軌跡の物理的な解釈は困難になります。 この様な問題を解決しようとする試みの一つが、TEC21の非線形解析方法です。 それは、
一つの具体的な方法として、
従って、軌跡が描く変位と加速度の関係から、システムに異常な運動を発生させる外力の作用とその応答の様子を知ることができます。 更に、システムに発生する異常からシステムの破損を防止する場合は、システムの運動エネルギーの変化率であるパワーPW(速度と加速度の積)を用いて破損の予兆を、パワーの異常増加として、正確に検出し、破損を回避できます。例えば、
さらに、TEC21の非線形解析の応用例には、次のような複雑なシステムの解析もあります。
参考文献Takeda, F., “A new real-time signal analysis with wavelets and its possible application to diagnosing the running condition of vehicles on wheels”, JSME Inter. J. Ser. C. 37(3), 549-558 (1994). Takeda, F., “New real time analysis of time series data with physical wavelets”, Proc. 3rd Experimental Chaos conf. World Scientific 75-79 (1996). Takeda, F., “Real time analysis of heart rate rhythms with physical wavelets”, Medical & Biological Eng. & Comp. 35(supp. 1), F83-OS4.04, 530 (1997). 武田文秀 、日本国特許庁、特許公報、第2787143号、運動変化検出装置(1998) 日本国特許庁、 特許公報、第3044228号、 血圧及び生体情報の検出装置(2000). 日本国特許庁、 特願2003-10045、 地震の予知システム(2003) |
地震予知情報に使用しているデータは、防災科学技術研究所と国土地理院がオンライン公開している気象庁一元化処理の震源要素と電子基準点のF3座標値です。 Copyright © 2003 TEC21. All rights reserved. This website has been opened since June 2003. Last Updated : 2015/11/23 11:40 |