東北地方太平洋沖地震(東北巨大地震)を起こした地殻変動
図1c:予兆的膨らみの発生と発生後の太平洋プレートの西方向への急加速と急停止とからなる異常加速運動
図1d:メガスラストがプレート境界の固着領域を壊し、巨大地震と津波を発生させた。
巨大地震が発生した東日本は、大陸プレートの東端上に位置し、その下に、太平洋プレートが沈み込んでいる。図1aの各GPSステーションの日々のF3座標値の時系列を解析すると、これら2つのプレートの相対運動の方向は、主に、東西方向である。太平洋プレートは、年間、約4cmの率で主に西方向へ、一方、大陸プレートは、年間、約2cmの率で主に東方向へと運動していた。東北巨大地震を発生させた地殻変動が2009年12月8日頃から出現した。プレート境界の東西方向の断面を赤の破線で示した、緯度38.5度付近の地殻変動の観測結果を、図1bの通常のスローな変形、図1cの予兆的な膨らみ、図1dの巨大地震と津波発生の3つのイラストにする。又、巨大地震発生前後の地殻変動も図1dに示した。 予兆発生前の東日本におけるプレート境界付近のスローな変形である。太平洋に面する東海岸側の下には、太平洋プレートと固着している領域がある。その固着域は、茶色で示され、その下の矢印は、太平洋プレートの西方向への運動を示し、固着域もその方向へ動いていた。固着域の西方向への運動が、太平洋に面する東海岸側を引きずり込んでいた(沈下させていた)。一方、大陸プレートの東方向へ矢印で示した 運動は、日本海に面する西海岸側を押し上げていた(隆起させていた)。このスローな変形は、長年にわたり生じた変形で、実線からのスローな変形として破線で示されている。 2009年12月8日頃から太平洋に面する東海岸側(大陸プレートの東端)と日本海に面する西海岸側に地殻の膨らみが観察された。大陸プレートの東方向への「押し」に対し、太平洋プレートの西方向への「押し」が強まったプレートの相対運動による膨らみは、「予兆的な膨らみ」として、赤の破線で表示されている。その膨らみは、東海岸側で1mm程、西海岸側で3mm程あった。又、この膨らみは、本州の東海岸側(四国の太平洋側も含む)と日本海岸側でも観察されている箇所がある。又、その「膨らみ」を観測した後、太平洋プレートの赤色の破線矢印で示されている西方向への異常運動が観測された。2010年7月8日頃から、その西方向への運動が加速され始め、2010年12月22日頃に通常の約3倍の西方向への移動速度に達した。その直後から、急減速し、2011年1月27日頃までに急停止した。そして、太平洋プレートの西方向への運動は、3月11日の巨大地震と津波発生まで停止し続けていた。 大陸プレートの東端に位置する東日本の地殻の膨らみを支えていた固着域は、太平洋プレートの西方向の運動に耐え切れなくなり、先ず浅い箇所が破壊され、深い箇所が一挙に壊れ、プレート境界で赤色の破線矢印で示す東方向への断層運動をし、巨大地震と津波とを発生させた。膨らみにより東方向に作用していた巨大な推力(メガスラスト)は、固着域を、先ず、浅い箇所から徐々に破壊させ、大きな断層運動を誘起した事になり、イラストは、観測事実と調和している。壊れた固着域は、丸印の破線で表示されている。 女川、村上、両津2のステーションの、通常な地殻変動(スローな変形)と予兆的な地殻変動(膨らみ)は、東日本一帯のGPSステーションで観測された。それらステーションを東海岸側の女川の様に、巨大地震発生前後で、ステーションの 地殻が「沈下◇」したグループ、西海岸側の両津2の様に地殻が「隆起△」したグループ、村上の様に、ステーションの地殻の沈下も隆起も発生しなかった「変化なし○」のグループに3種類のシンボルを使用して分類表示した。図には、2011年3月11日に発生した巨大地震(3/11 M9)とその余震分布も表示した。又、2003年9月26日に発生したM8の十勝沖地震、2010年12月22日に発生した巨大地震の予兆的な父島近海のM7.9地震、巨大地震の前震である2011年3月9日のM7.5地震(3/9 M7.5)とその余震分布も表示した。
巨大地震が発生した東日本は、大陸プレートの東端上に位置し、その下に、太平洋プレートが沈み込んでいる。図1aの各GPSステーションの日々のF3座標値の時系列を解析すると、これら2つのプレートの相対運動の方向は、主に、東西方向である。太平洋プレートは、年間、約4cmの率で主に西方向へ、一方、大陸プレートは、年間、約2cmの率で主に東方向へと運動していた。東北巨大地震を発生させた地殻変動が2009年12月8日頃から出現した。プレート境界の東西方向の断面を赤の破線で示した、緯度38.5度付近の地殻変動の観測結果を、図1bの通常のスローな変形、図1cの予兆的な膨らみ、図1dの巨大地震と津波発生の3つのイラストにする。又、巨大地震発生前後の地殻変動も図1dに示した。
地殻変動のまとめ
GPSを用いたステーションの位置観測には、複雑な環境ノイズが含まれる。従って、その時系列の日々の変動には、地殻変動とは無縁なランダム変動が混入する。特に、上下変動には、大きな季節変動やジグザグ変動があり、そのジグザグ箇所で時間微分が
不可能となる。
東西、南北方向の変動成分にもノイズの影響が残り、そのステーションの変位、速度、加速度を確定できない。従って、その時間微分操作が持つ時間の非対称
性に関する物理的性質を、正しく反映する差分操作を拡張した物理
的ウエーブレットを用いて変位D(c,τ)、
速度V(c,τ)、加速度A(c,τ)を検出する。GPSステーションの
時刻τの変位D(c,τ)、
速度V(c,τ)と、そのD-V位相平面図のD(c,τ)-V(c,τ)軌跡とを用いると、ノイズに埋もれていた「地殻変動
に現れた膨らみ」を「巨大地震発生の予兆」として確定できた
[P1]。その予兆の推移が、図1b-図1cに描いた地殻変動の
モデルで、巨大地震発生の自然法則の観測例である。巨大地震を起こした地殻変動の詳細は、Appendixの地殻変動解析で後述する。
[P1]
武田文秀、大地震と巨大地震の予知方法、予知装置、予知プログラム及び記録媒体、特願2012-243002, (2012).
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